名古屋地方裁判所 平成2年(ワ)2607号 判決
豊明市三崎町社八番地の三
原告
植松義則
名古屋市南区弥次ヱ町二丁目一九番地の一
原告
植松工業株式会社
右代表者代表取締役
植松義則
右原告ら訴訟代理人弁護士
野田弘明
右訴訟復代理人弁護士
竹内裕詞
右輔佐人弁理士
西山聞一
東京都江戸川区鹿骨六丁目八番二三号
被告
株式会社アサヒ
右代表者代表取締役
赤間保吾
右訴訟代理人弁護士
塩見渉
右訴訟復代理人弁護士
花村淑郁
右輔佐人弁理士
藤巻正憲
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告らの負担とする。
事実及び理由
第一 申立て
一 被告は、別紙イ号、ロ号、ハ号、ニ号及びホ号各物件目録記載の研摩布紙ホイールを、製造し、販売し又は販売のため展示してはならない。
二 被告は、その本店、営業所及び工場に存する前項記載の物件並びにその半製品及び仕掛品を廃棄し、かつ、前項記載の物件の製造設備を除却せよ。
三 被告は、原告植松義則に対し一四〇〇万円及び原告植松工業株式会社に対し四〇〇万円並びに右各金員に対する平成二年九月九日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 仮執行宣言
第二 事案の概要
本件は、被告による研摩布紙ホイールの製造販売行為につき、原告植松義則(以下「原告植松」という。)が意匠権及び実用新案権に基づき、並びに原告植松工業株式会社(以下「原告会社」という。)が意匠権及び実用新案権の専用実施権に基づき、それぞれ、被告に対し、製造販売の差止め等及び損害賠償を求めた事案である。
一 争いのない事実等
1 意匠権
(一) 原告植松は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)の権利者である。
意匠に係る物品 研摩布紙ホイール
出願日 昭和五七年五月二四日
登録日 昭和六一年一二月二三日
登録番号 第七〇一八九八号
登録意匠の内容 本判決添付の意匠公報(以下「本件意匠公報」という。)記載のとおり
(二) 原告会社は、本件意匠権につき、次の専用実施権を有する(甲一)。
登録日 平成元年一二月一八日
範囲 地域 日本全国
期間 本件意匠権の存続期間満了まで
内容 製造、使用、譲渡
(三) 被告は、別紙イ号、ロ号、ハ号、ニ号及びホ号各物件目録(ただし、イ号、ロ号及びハ号各物件目録の「構成の説明」部分を除く。)記載の研摩布紙ホイール(以下、それぞれを「イ号物件」のようにいい、合わせて「被告各物件」ともいう。)を、製造販売している。
2 実用新案権
(一) 原告植松は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。
考案の名称 研摩布紙ホイール
出願日 昭和五七年五月一四日
出願公開日 昭和五八年一一月一九日
出願公告日 昭和六三年二月五日
登録日 昭和六三年一〇月一一日
登録番号 第一七四五一七三号
(二) 原告会社は、本件実用新案権につき、次の専用実施権を有する(甲二)。
登録日 平成元年一二月一八日
範囲 地域 日本全国
期間 本件実用新案権の存続期間満了まで
内容 製造、使用、譲渡
(三) 本件考案の実用新案登録請求の範囲は、本判決添付の実用新案公報(以下「本件実用新案公報」という。)の該当欄に記載のとおりである。
(四) 本件考案の構成要件を分説すれば、次のとおりである。
A 多数の矩形状研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成された環状研摩体3
B 環状研摩体3の外周縁側を残した内端面3bに、ファイバー5を介在して軸孔2を有するホイール基盤1を接着剤によって一体結合してなる
C 研摩布紙ホイール
(五) 本件考案の作用効果は、次のとおりである(甲四)。
(1) ホイール基盤1に一体結合された環状研摩体3が、多数の矩形状研摩布紙片4をそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設させた構成としてあるから、各研摩布紙片4が隣接どうし傾斜状に重なり合って相互に補強し合って各研摩布紙片4自体の腰が強大となり、不均整な歪を生じたり、型崩れを生じたりせず、かつ、局部的に過度な摩耗を生ぜず長期にわたって安定使用でき寿命を著しく向上できると共に、研摩の際の押圧強度も均整で平滑な高精度の表面研摩が安定的に行える。
(2) 特にこの考案の特徴とするところは、環状研摩体3を構成している多数の各研摩布紙片4が、それぞれ適宜角度を傾斜して集束繞設され研摩面の砥粒が金属加工面に対して鋭角に当たるように構成された点で、このために研摩時に、傾斜状基材布紙に結合保持されている砥粒に作用する力は、そのベクトルが該砥粒を基材布紙に押え付ける働きをし、砥粒を保持している結合剤の力を助勢増大せしめ、鋭い刃先の自生を促し、常に安定した優れた研摩、研削能力及び研摩精度を発揮できると共に耐用寿命を著しく増大させることができる。
(3) 研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるため、研摩作業開始後、直ちに各研摩布紙片4ごとに砥粒が脱落した帯域がそれぞれ研摩面砥粒部に接して形成され、この砥粒脱落の布紙帯域が、砥粒と結合剤との間にある切り屑の逃げ場となる規模の大きい一種の気孔の役目を果たして切り屑を内外方に円滑に排出せしめるもので、従来の砥石や研摩ディスクのように切り屑の目づまり現象が生ぜず、加工物に熱をもたせない。
(4) 環状研摩体3も、個別の各研摩布紙片4が集束されてなるため、熱伝導による熱の伝わりが小さく放熱効果がよいもので、加工物ともども熱をもたないため、加工物の表面に研削焼けや研削割れなど目つぶれを生ぜしめない。
(5) ホイール基盤1は、環状研摩体3の外周縁側を残した内端面3bに、ファイバー5を介在して接着固定されており、ディスクグラインダーに着装して研摩作業を行う際、前記環状研摩体3の回転により、その外周縁側における各研摩布紙片4の各隣接空間部をそれぞれ通過する旋回空気流が誘起され、該空気流が被研摩金属表面を冷却して摩擦加熱を防止する。
(6) 環状研摩体3は、前記のように腰が強く研摩有効厚みが大であるから、その厚みがごく薄くなるまで長期にわたって安定使用できる。
(7) 環状研摩体3は、ファイバー5を介在して接着剤によってホイール基盤1に結合固定されているから、結合固定が極めて安定強固であると共に、ファイバー5が緩衝機能をもち、常に安定した均一な研摩を行わしめることができる。
(六) 被告は、イ号、ロ号及びハ号各物件目録記載の研摩布紙ホイールを、昭和六一年九月以降製造販売している(ただし、右各物件目録の「構成の説明」中、「該ホイール基盤とほぼ同型のガラスクロスファイバーを介在し」とある点並びに各物件目録の第四図中の「ガラスクロスファイバー」がホイール基盤と別体として存在するかどうか及び「接着剤」と表示されている部分が空間になっているか否かの点は、争いがある。)。
二 争点
1 被告意匠は本件意匠と類似するか(争点1)
(一) 原告ら
(1) 本件意匠の範囲
本件意匠は、次の形状よりなる。
〈1〉 多数の矩形状研摩布紙片を円環状に重合することにより、表裏面に放射状のひだを表わすと共に、外周面に矩形状研摩布紙片の一辺がそれぞれ軸方向に対し約三〇度の傾斜線を表わした円環板状の研摩ディスクの上部に、中心に軸孔を円状に表わした鍔付き截頭円錐台状のホイール基盤を研摩ディスクより小径にして同心的に表わしている。
〈2〉 平面において、研摩ディスク外径、ホイール基盤における鍔径並びに截頭円錐台形の大径及び小径、軸孔が、その径比を概ね六対四・七対三対二対一として同心円状に表われ、ホイール基盤の鍔の周縁より研摩ディスクのひだの輪郭線が放射状に表われている。
〈3〉 底面において、研摩ディスクが円環状に表われ、その表面にはひだの輪郭線が放射状に表われ、その内輪の奥底に嵌合されたほぼ凹型円状の座板の中央が中心に表わした円状の軸孔と共に円状に陥没して円座を表わし、研摩ディスクの外径及び内径並びに座板における外径、円座の径、軸孔径の比を概ね六対四・七対三・一対一・八対一として同心的に表わしている。
〈4〉 研摩ディスクの外径に対する研摩ディスクとホイール基盤の高さ比を概ね一対〇・一六対〇・〇六七としている。
(2) 本件意匠の基本的構成態様
本件意匠の基本的構成態様は、
〈1〉 多数の研摩布紙片を傾斜して重ね合わせ、環状に配した研摩部に
〈2〉 右研摩部より小径で、中心に軸孔を有し、鍔付き截頭円錐台状(中央部が膨出した形状)の円形の基盤が結合している
点であり、右の点が看者の注意を最も惹くものである。しかも、このような構成の先行意匠はなく、まったく新規なものである。
(3) 本件意匠と被告意匠との対比
〈1〉 本件意匠と被告各物件の意匠(以下、イ号物件の意匠を「イ号意匠」、ロ号物件の意匠を「ロ号意匠」、ハ号物件の意匠を「ハ号意匠」、ニ号物件の意匠を「ニ号意匠」、ホ号物件の意匠を「ホ号意匠」といい、合わせて「被告各意匠」という。)との共通点は、次のとおりである。
イ 多数の矩形状研摩布紙片を円環状に重合することにより、表裏面に放射状のひだを表わすと共に、外周面に矩形状研摩布紙片の一辺がそれぞれ軸方向に対し傾斜線を表わした円環板状の研摩ディスクの上部に、中心に軸孔を円状に表わした鍔付き截頭円錐台状のホイール基盤を研摩ディスクより小径にして同心的に表わしている。
ロ 平面において、研磨ディスクの外径、ホイール基盤における鍔径並びに截頭円錐台形の大径及び小径、軸孔が同心円状に表われ、ホイール基盤の鍔の周縁より研磨ディスクのひだの輪郭線が放射状に表われている。
ハ 底面において、研磨ディスクが円環状に表われ、その表面にはひだの輪郭線が放射状に表われ、その内輪の奥底には中心に円状の軸孔を表わしたほぼ凹型円状の座板が同心的に表われている。
〈2〉 右によれば、被告各意匠は本件意匠と基本的構成態様において共通しているところ、両者の相違点は、被告各意匠においては、研摩布紙片の枚数が比較的少なく(底面図)、そのため研摩部が比較的薄い(正面図等)、また、研摩部の周縁部の基盤からはみ出した度合が比較的小さいという程度(寸法)の差である。
なお、右の差異については、その寸法の差は微差であり、かつ、研摩布紙ホイールにおいて、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み及び研摩部周縁部の基盤からのはみ出しの度合は、研摩布紙ホイールの性質、用途、使用形態などからしても質的な相違をもたらすものではないから、要部ではなく需要者にとって、右の相違点が独自の美感を生ずるものとは認識されない。
〈3〉 したがって、本件意匠と被告各意匠とを全体的に観察した場合、両者は、意匠の要部において構成態様を共通にし、美感を共通にするから、類似している。
(二) 被告
(1) 本件意匠の特徴
回転円盤研摩具は、その用途上、研摩布紙が表われる底面の形状が最も看者の注意を惹く部分であり、平面図に表われるホイール基盤は物品の形状を特徴付ける部分ではないし、ディスクグラインダーに取り付けられた場合には隠れてしまい、看者の目に触れない部分である。したがって、本件意匠との類否の判断に当たっては、底面図が大きなウェイトを占めるというべきである。
しかも、原告らが本件意匠の要部ないし基本的構成態様として主張する形状は、いずれも出願前に公知であった形状であり、また、原告植松は、出願の過程において、拒絶理由通知の引用例とされた回転紙やすりとの相違を、外周面の多数の研摩布紙片の外端線がそれぞれ軸方向に対し約四五度傾斜した傾斜線であることとし、それを特徴とする旨主張していたのであるから、本件意匠の特徴は、研摩部の外周面形状にあるというべきである。
そして、本件意匠は、本件意匠公報に記載されたとおりの直径と厚みの比をもち、研摩布紙の枚数(密集度)も一四〇枚程度の研摩布紙ホイールにおいて、研摩布紙片の外端線が軸方向に対し約四五度傾斜していることを特徴とするものと解すべきである。
(2) 本件意匠と被告各意匠との比較
本件意匠と被告各意匠とを比較するに当たっては、基盤部と研摩部のバランス、研摩部の外周面形状、研摩図の底面図及び平面図の形状等の要素について検討すべきであるが、本件意匠は、基盤部と比べて研摩部が支配的であり、かつ、その厚みのある外周面が強調され、その外周面に形成された底面に対して四五度の角度をなす多数の傾斜線による模様に特徴をもち、全体としてぼってりとした美感を示すのに対し、被告各意匠の研摩部はいずれも六〇枚(ニ号及びホ号各意匠においては七二枚)の研摩布紙片からなるため、基盤部と研摩部が同等で薄く一体的であり、研摩部の外周面も底面に対して二〇度の角度をなす少数の傾斜線(ニ号及びホ号各意匠においては、二枚重ねの傾斜線)による模様で平盤的であり、全体としてスリムな美感を示す。すなわち、被告各意匠は、回転円盤砥石の延長にあり砥石形状を損わないよう研摩部を薄く平盤的に形成したものである。その他、看者の目に触れやすい研摩面(底面図)においても、研摩布紙の配列ピッチや研摩布紙片の辺の方向性(被告各意匠においては軸孔の中心を向いている。)に相違があり、全体として本件意匠と被告各意匠との美感の相違は顕著である。
さらに、ハ号意匠においては、基盤の表面全面に格子網目模様を表わし、また、ニ号及びホ号各意匠においては基盤の表面が自転車車輪のごとき特異な模様を表わしており、単なる平滑形状である本件意匠とは、その点にも大きな差異がある。
2 イ号、ロ号及びハ号各物件は、本件考案の技術的範囲に属するか(争点2)
(一) 原告ら
(1) 本件考案の構成要件Aにいう「接線方向」とは円周方向を意味し、「繞設」とはめぐらして設ける、囲って設けるという意味である。また、「研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たる」ためには、研摩布紙の一枚一枚すべてを一定の角度で傾斜させることが不可欠である。
また、右構成要件Aにいう「矩形状」は、「台形状」を含むものであり、仮にそうでないとしても、台形は、矩形の左右に三角形を付加したものであるから、単なる付加構成か設計変更である。そして、研摩布紙片が台形状であることにより、本件考案と異なる作用効果が生じることはない。
イ号、ロ号及びハ号各物件においては、多数の台形状研摩布紙片がそれぞれ傾斜して接線方向に集束繞設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように環状研摩体が構成されているから、本件考案の構成要件Aを充足している。
(2) イ号、ロ号及びハ号各物件は、各物件目録記載のとおり、ホイール基盤と環状研摩体を網目状のガラス繊維(ガラスクロスファイバー)を介在して接着剤にて強固に一体結合したものであり、本件考案の構成要件Bにいうファイバーを備えている。
(3) したがって、イ号、ロ号及びハ号各物件は、本件考案の構成要件をすべて満たしているから、本件考案の技術的範囲に属する。
(二) 被告
(1) 本件考案の「接線方向」の意味は明らかでない。
また、イ号、ロ号及びハ号各物件の環状研摩体は、いずれも、矩形状の研摩布紙片ではなく、台形状の研摩布紙片によって構成されている。これによって、研摩布紙片の端縁はホイール基盤の中心を通るように構成され、研摩面が可及的に平坦になり、各研摩布紙片が被研摩物に対して可及的に平面で接触するように工夫されているから、本件とは異なる優れた研摩作用をもたらす。
さらに、本件考案の研摩布紙片は、被研摩物に対し約四五度の傾斜角度で接触するのに対し、イ号、ロ号及びハ号各物件においては、いずれも被研摩物に対して可及的に平面で接触する。したがって、「研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように」構成されているものではない。
したがって、イ号、ロ号及びハ号各物件は、本件考案の構成要件Aを充足しない。
(2) イ号、ロ号及びハ号各物件では、各物件目録の「構成の説明」部分の記載とは異なり、環状研摩体とホイール基盤との間にファイバーを介在させていない(なお、各物件目録の第四図中の「接着剤」と表示されている部分は、空間になっている。)。イ号及びロ号各物件のファイバー(ガラスクロス)は、ホイール基盤に埋め込まれ、基盤そのものの強化のためのものであり、ハ号物件においてはホイール基盤そのものがファイバーで構成されているから、本件考案のファイバーが有するとされる作用効果をいずれも有していない。
3 損害額(争点3)
(一) 原告ら
(1) 被告は、昭和六二年以降、被告各物件を製造販売し、その売上高は、合計で毎月一〇〇〇万円以上である。
(2) 右売上の利益率は、売上高の五パーセントを下らないから、被告は、昭和六二年九月一日から平成二年八月三一日までの間に、本件意匠権及び本件実用新案権の侵害行為により一八〇〇万円以上の利益を得た。
(3) よって、被告に対し、原告植松は本件意匠権及び本件実用新案権の侵害に対する損害賠償として右(2)の一部である一四〇〇万円、並びに原告会社は本件意匠権及び本件実用新案権の専用実施権の侵害に対する損害賠償として右(2)の一部である四〇〇万円、並びに右各金員に対する不法行為の後である平成二年九月九日から右支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(二) 被告
右(一)(1)及び(2)の事実は否認する。
第三 争点に対する判断
一 被告意匠は本件意匠と類似するか(争点1)
1 本件意匠の構成について
証拠(甲三、甲八の一ないし六、乙一の一ないし六、検甲九)によれば、本件意匠は、次の形状よりなるものと認められる。
(一) 約一四〇枚の研摩布紙片を傾斜させて重ね合わせることにより環状研摩体を構成し、その上部に、研摩体部分よりも小径であって、中心に軸孔を有し、中央部が円錐台形となっているホイール基盤を有する。
(二) 環状研摩体の部分は、外周面で各研摩布紙片の辺が底面に対して約三五度傾斜して規則的な模様を表わしており、環状研摩体の外径に対する環状研摩体の高さとホイール基盤の高さの比は概ね一対〇・一六対〇・〇六七である。
(三) 平面において、環状研摩体の外径、ホイール基盤の直径、中央の円錐台形部分の大径及び小径並びに軸孔の比は、概ね六対四・七対三対二対一であって、これらは同心円をなす。
(四) 底面において、環状研摩体の研摩布紙片の辺がそれぞれホイール基盤の軸孔のほぼ接線をなす位置にあり、ホイール基盤軸孔の外側には円形の座板があり、軸孔、座板並びに環状研摩体の内周及び外周が同心円をなす。
(五) 全体の印象は、ホイール基盤に比べて環状研摩体の部分が大きく、側面から見た場合には環状研摩体部分が分厚く(環状研摩体部分がホイール基盤部分の約二・四倍の高さを有する。)、平面から見た場合には環状研摩体部分がホイール基盤から少なからずはみ出しているという印象を与え(環状研摩体部分の直径の約二二パーセントがホイール基盤から外側にはみ出している。)、環状研摩体の側面及び底面において、多数の研摩布紙片の辺による規則的な模様が見られる点が特徴的である。
2 これに対し、証拠(乙二三ないし二六、検甲一ないし五、検乙一ないし四の各一、二)によれば、被告各意匠について、次のとおり認められる。
(一) 被告各意匠は、いずれも、研摩布紙片を傾斜させて重ね合わせることにより環状研摩体を構成し、その上部に、研摩体部分よりも小径であって、中心に軸孔を有し、中央部が円錐台形となっているホイール基盤を有する点で、本件意匠と共通である。
(二) しかし、イ号、ロ号及びハ号各意匠の環状研摩体は、いずれも六〇枚の研摩布紙片からなり、本件意匠のそれと比較して研摩布紙片の枚数が少ないため、環状研摩体の部分が分厚くなく、ホイール基盤と同程度の厚みであり、また、その外周面で各研摩布紙片の辺が規則的な模様を表わしているが、その傾斜は底面に対して約二〇度である。さらに、底面において研摩布紙片の辺が構成する模様も、研摩布紙片の枚数が少ないため配列のピッチが比較的大きく、しかも、各研摩布紙片の辺は、ホイール基盤の軸孔の接線方向ではなく、いずれも、軸孔の中心を中心として放射状に構成されている。また、平面図において、環状研摩体部分の直径のうちホイール基盤から外側にはみ出している部分の割合は、イ号意匠において約一六パーセント、ロ号意匠において約八パーセント、ハ号意匠において約五パーセント、ニ号及びホ号各意匠において約九パーセントである。
(三) ニ号及びホ号各意匠の環状研摩体は、いずれも七二枚の研摩布紙片からなり、本件意匠のそれと比較して研摩布紙片の枚数が少ないため、環状研摩体の部分が分厚くなく、ホイール基盤と同程度の厚みである。また、その外周面で各研摩布紙片の辺が規則的な模様を表わしているが、その傾斜は底面に対して約二〇度であり、かつ、各研摩布紙片は、二枚ずつまとめて配列されている。さらに、底面において研摩布紙片の辺が構成する模様も、研摩布紙片の枚数が少ないため配列のピッチが比較的大きく、各研摩布紙片の辺は、ホイール基盤の軸孔の接線方向ではなく、、いずれも、軸孔の中心を中心として放射状に構成され、各研摩布紙片は二枚ずつまとめて配列されているため、放射状の線も疎の部分と密の部分が交互に表われる模様となっている。
3 右1及び2の判示を前提として検討するに、本件意匠は、多数の研摩布紙片からなる分厚い環状研摩体とこれに対して比較的小さいホイール基盤とによって構成されているのに対し、被告各意匠は、本件意匠の研摩布紙片の二分の一以下の枚数の研摩布紙片からなり、全体として薄いスリムな印象を与える。また、本件意匠の環状研摩体底面の放射状の線は、多数で「密」な印象を与えるのに対し、被告各意匠においては、その底面の放射状の線は、イ号ないしハ号各意匠ではまばらで「疎」な印象、ニ号及びホ号各意匠では「疎」と「密」とが交互に形成されているとの印象を与える。したがって、本件意匠と被告各意匠は視覚を通じての美感を異にするものと認められるから、被告各意匠はいずれも本件意匠に類似するものではないというべきである。
4 これに対し、原告らは、本件意匠の基本的構成態様は、〈1〉 多数の研摩布紙片を傾斜して重ね合わせ、環状に配した研摩部に、〈2〉 右研摩部より小径で、中心に軸孔を有し、鍔付き截頭円錐台状(中央部が膨出した形状)の円形の基盤が結合している点であり、この点で本件意匠と被告各意匠とは共通であり、かつ、研摩布紙ホイールにおいて、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み及び研摩部周縁部の基盤からのはみ出しの度合は、物品の性質、用途、使用形態などからしても質的な相違をもたらすものではないから、要部ではなく、需要者にとって、右の相違点が独自の美感を生ずるものではないと主張する。
(一) しかしながら、証拠(乙三、八、一〇ないし一二)によれば、ディスクグラインダーに装着して用いる研摩ホイールないし回転砥石において、軸孔付近に円錐台形の突起を有するホイール基盤を有する意匠、研摩部分よりも小径の補強体ないし保護ディスクを有する回転砥石の意匠及び研摩部の外径よりも小径のホイール基盤を有する研摩布紙ホイールの意匠は、いずれも本件意匠出願前に公知であったことを認めることができ(なお、一九七八年(昭和五三年)一〇月に西ドイツにおいて発行された雑誌中に記載されている研摩盤の写真(乙三)によれば、その側面の形状は明らかではないものの、底面及び正面の形状からすれば、正面の「SCHLEIFMOP」なる表示のある部分がホイール基盤であって、その外側には研摩部分がはみ出しているものと認めることができ、側面の形状が明らかでないことは、右認定を妨げるものではない。)、これらの公知意匠を前提とすると、本件意匠のホイール基盤の形状あるいは研摩部がホイール基盤よりも大径に構成されている点に本件意匠の特徴があるということはできない。
(二) さらに、証拠(乙一の三、四)によれば、原告植松は、特許庁審査官の拒絶理由通知に対し、昭和六一年六月二三日付けの意見書を提出しているが、その意見書において、本件意匠は、環状研摩体の外周面がそれぞれ約四五度傾斜した多数の傾斜線によって形成されていて変化に富んだ幾何学的模様を有するという点に特徴があるものと主張しており、ホイール基盤の形状あるいは環状研摩体との大きさの違いについては何ら触れられていないことが認められる。
(三) また、研摩部の構成についても、証拠(乙九)によれば、「布紙からなる基材の表面に砥粒を接着して短冊状に裁断した多数の研摩布紙を、その砥粒面を表にして長辺の一端縁を、柔軟性を有する円板の表面に、その中心から放射状に接着固定してその自由面を互いに重なり合うようにして砥粒面に段差を形成したことを特徴とする回転研削、研摩板」なる発明は、本件意匠の出願前に公知であったことが認められ、これによれば、研摩布紙片を中心から放射状に接着固定して互いに重なり合うようにして構成した研摩板は公知であったものというべきであるから、このような公知意匠を前提とすると、本件意匠との類否を検討するに当たって、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み等を重視する必要がないということはできない。
(四) 右(一)ないし(三)において判示したところによると、本件意匠と被告各意匠の類否を検討するに当たっては、ホイール基盤の形状とそれが研摩部よりも小径であることのみを取り上げて本件意匠の要部であるとすることは適当ではなく、かえって、研摩布紙片の枚数、研摩部の厚み及び研摩部周縁部の基盤からのはみ出しの度合についてもこれを無視することはできないというべきであるから、本件においては、前記1ないし3判示のとおり環状研摩体部分の与える美感を重視して判断すべきものであり、原告らの前記主張はいずれも採用することができない。
5 したがって、被告各意匠は、本件意匠に類似しないというべきである。
二 イ号、ロ号及びハ号各物件(以下、この項において「被告各物件」という。)は、本件考案の技術的範囲に属するか(争点2)
1 「矩形状研摩布紙片」の要件(本件考案の構成要件A)について
一般に、「矩形」とは、「(矩は直角の意)直角四辺形。長方形。さしがた。」(広辞苑第四版)を意味するものと解されており、この字義によれば台形はこれに含まれない。
被告各物件の研摩布紙片は台形状であるから、本件考案の右要件を充足しない。
2 「多数の矩形状研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて」の要件(本件考案の構成要件A)について
(一) 右の構成要件の「接線方向で集束繞設されて」なる文言が、具体的に研摩布紙片をどのように配置したものを意味するのかは、文言自体からは必ずしも明確であるとはいえないが、本件実用新案公報(甲四)の考案の詳細な説明欄によれば、従来技術の説明として、「従来、研摩布紙ホイールとして矩形状研摩布紙片を中心軸孔の外周に垂直状態で多数放射状に集束繞設して環状研摩体と成し、その表裏両面の中心部に嵌リングを当てて接着剤にて一体に結合固定したものなどが一般に知られている。しかるに、この種、従来の研摩布紙ホイールでは環状研摩体を構成している研摩布紙の配列密度が内側ほど大きく、外側になるほど小さくなっていることなどもあって、おのずと研摩の際の押圧強度にバラツキがあり、不均整な圧力抵抗を受けることになり、平滑で精密な安定した表面研摩が望めなく、しかも環状研摩体の外周研摩面の不均等な摩耗を生じると共に不均一な歪を生じて型崩れを生じ耐用度寿命を著しく劣化させるなどの大きな欠点があった。この考案は上記に鑑みなされたもので、以下説明するような研摩布紙ホイールを提供して従来の諸欠点、諸問題を解消するようにしたものである。」と記載されている(本件実用新案公報1欄11行ないし2欄1行)。
そうすると、本件考案にいう「研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて」との構成は、右の従来技術にいう「研摩布紙片を中心軸孔の外周に垂直状態で多数放射状に集束繞設して環状研摩体と成」すという構成との対比を示すものであり、右にいう「接線方向」とはホイール基盤の「軸孔」の外周の接線方向をいい、したがって、各研摩布紙片の辺が環状研摩体の底面においてそれぞれ右軸孔の接線の方向を指す構成を意味するものと解するのが相当である。
右のことは、本件実用新案公報の図面においても、その第2図において、環状研摩体の底面における各研摩布紙片の辺が、概ね中心軸孔6aの接線の方向と合致していることからも裏付けられるものというべきである。
(二) 右(一)の判示を前提として検討するに、被告各物件においては、各物件目録の第二図の記載によれば、環状研摩体の底面における各研摩布紙片の辺はホイール基盤の軸孔の外周の接線方向ではなく、軸孔の中心方向を向いていることが明らかであり、「研摩布紙片4がそれぞれ傾斜して接線方向で集束繞設されて」との要件を充たさないものというべきである。
3 環状研摩体の内端面に、ファイバーを介在してホイール基盤を接着剤によって一体結合するとの要件(本件考案の構成要件B)について
(一) 右構成要件によれば、本件考案においては、ホイール基盤と別個の部材であるファイバーを環状研摩体とホイール基盤との間に介在させるとされているものであり、それによって、環状研摩体とホイール基盤との結合安定が極めて安定強固になると共に、ファイバーが緩衝機能をもち、常に安定した均一な研摩を行わしめることができるとの作用効果を有するものが想定されていると解される。
(二) しかしながら、被告各物件について、ホイール基盤と環状研摩体との間に別個の部材が介在することを認めるべき証拠はない。
なお、証拠(乙二〇ないし二二、三二ないし三六、検甲六ないし八、検乙五の一ないし三、検乙六ないし一一)及び弁論の全趣旨によれば、(1) イ号及びロ号各物件のホイール基盤は、調合砂ないしコーテッド・サンドを金型に投入して層にし、その上に強化補強用のガラスクロスを敷き、さらに右調合砂等を投入し、再び強化補強用のガラスクロスを敷き、その上に右調合砂等を投入して調合砂等とガラスクロスが交互に積層した構造の基盤原料に対して、プレスによる加圧成型及び焼成炉による加熱硬化を行って製造されていること、(2)右のようにして製造されたホイール基盤の表面にはガラスクロスが表われることがあるが、いずれにしても、ガラスクロスはホイール基盤の一部をなすものであること、(3) 被告は、右のようにして製造されたホイール基盤に接着剤を塗布し、適宜の治具で円周方向に配置して並べた研摩布紙片を接着剤上に置き、接着剤を固化させると共に、ホイール基盤の厚さ方向にプレスしてイ号及びロ号各物件を製造していること、右のとおり認めることができ、これによれば、イ号及びロ号各物件におけるガラスクロスは、右(一)にいう緩衝機能を有するような形態のものでもないというべきである。
右によれば、いずれにせよ、被告各物件は本件考案の構成要件Bにいう「ファイバー」を備えていないというべきである。
4 まとめ
したがって、被告各物件は、本件考案の構成要件A、Bをいずれも充足しないものであり、本件考案の技術的範囲に属さないというべきである。
第四 総括
以上判示したところによれば、原告らの請求は、その余の点につき判断するまでもなくいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 後藤博 裁判官 入江猛)
イ号物件目録
一 図面の簡単な説明
イ号物件は、別添写真の研摩布紙ホイールであり、図面の第一図は平面図、第二図は底面図、第三図は側面図、第四図は中央断面図である。
二 構成の説明
図面において、環状研摩体は、多数の台形状研摩布紙片が一定の角度ないし方向でそれぞれ傾斜して、相互のその一部で重ねられ、円周に沿って並べることにより構成されており、この環状研摩体は、それより小径で中央部を突出形成し、該中央部に軸孔を貫設したホイール基盤の内面に、該ホイール基盤とほぼ同形のガラスクロスファイバーを介在し、その外周縁側を残して接着固定され、また、その内部に軸孔を有する座板が固着されている。
イ号物件(写真)
〈省略〉
イ号物件
〈省略〉
ロ号物件目録
一 図面の簡単な説明
ロ号物件は、別添写真の研摩布紙ホイールであり、図面の第一図は平面図、第二図は底面図、第三図は側面図、第四図は中央断面図である。
二 構成の説明
図面において、環状研摩体は、多数の台形状研摩布紙片が一定の角度ないし方向でそれぞれ傾斜して、相互のその一部で重ねられ、円周に沿って並べることにより構成されており、この環状研摩体は、それより小径で中央部を突出形成し、該中央部に軸孔を貫設したホイール基盤の内面に、該ホイール基盤とほぼ同形のガラスクロスファイバーを介在し、その外周縁側を残して接着固定され、また、その内部に軸孔を有する座板が固着されている。
ロ号物件(写真)
〈省略〉
ロ号物件
〈省略〉
ハ号物件目録
一 図面の簡単な説明
ハ号物件は、別添写真の研摩布紙ホイールであり、図面の第一図は平面図、第二図は底面図、第三図は側面図、第四図は中央断面図である。
二 構成の説明
図面において、環状研摩体は、多数の台形状研摩布紙片が一定の角度ないし方向でそれぞれ傾斜して、相互のその一部で重ねられ、円周に沿って並べることにより構成されており、この環状研摩体は、それより小径で中央部を突出形成し、該中央部に軸孔を貫設したホイール基盤の内面に、該ホイール基盤とほぼ同形のガラスクロスファイバーを介在し、その外周縁側を残して接着固定され、また、その内部に軸孔を有する座板が固着されている。
ハ号物件(写真)
〈省略〉
ハ号物件
〈省略〉
ニ号物件目録
ニ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。
ニ号物件(写真)
〈省略〉
ニ号物件(参考図)
〈省略〉
ホ号物件目録
ホ号物件は、別添写真及び図面のとおりの研摩布紙ホイールである。
ホ号物件(写真)
〈省略〉
ホ号物件(参考図)
〈省略〉
日本国特許庁
昭和82年(1987)3月31日発行 意匠公報(S)
K1-414
701896 意願 昭57-22877 出願 昭57(1982)5月24日
登録 昭61(1986)12月23日
創作者 植松義則 豊明市三崎町社8番地3
意匠権者 植松義則 豊明市三崎町社8番地3
代理人 弁理士 大矢須和夫
審査官 菅原英
意匠に係る物品 研摩布紙ホイール
この意匠は図面代用写真によって表わされたものであるから細部については原本を参照されたい
〈省略〉
〈19〉日本国特許庁(JP) 実用新案出願公告
実用新案公報(Y2) 昭63-4608
〈51〉Int.Cl.4B 24 D 13/16 13/06 識別記号 庁内整理番号 6526-3C 6526-3C 〈24〉〈44〉公告 昭和63年(1988)2月5日
考案の名称 研摩布紙ホイール
実願 昭57-70922 公開 昭58-173463
出願 昭57(1982)5月14日 昭58(1983)11月19日
考案者 植松 義則 愛知県豊明市三崎町社八番地三
出願人 植松 義則 愛知県豊明市三崎町社八番地三
代理人 弁理士 大矢須和夫
審査官 後藤正彦
参考文献 実開 昭47-11683(JP.U)
〈57〉実用新案登録請求の範囲
多数の矩形状研摩布紙片4が夫々傾斜して接線方向で集束 設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように構成された環状研摩体3の外周 を残した内端面3bに、フアイバー5を介在して軸孔2を有するホイール基盤1を接著剤によつて一体結合してなる研摩布紙ホイール.考案の詳細な説明
この考案は研摩布紙ホイールの改良に関するものである.
従来、研摩布紙ホイールとして矩形状研摩布紙片そ中心軸孔の外周に垂直状態で多数放射状に集束 設して環状研摩体と成し、その表裏両面の中心部に リングを当てて接着剤にて一体に結合固定したものなどか一般に知られている.
しかるに、この種、従来の研摩布紙ホイールでは環状研摩体を構成している研摩布紙の配列密度が内側ほど大きく、外側になるほど小さくなつていることなどもあつて、おのずと研摩の の押圧強度にバラツキがあり、不均 な圧力抵抗を受けることになり、平滑で精密な安定した表面研摩が めなく、しかも環状研摩体の外周研摩面の不均等な摩耗を生じると共に不均一な歪を生じて型 れを生じ 用度寿命を著しく劣化させるなどの大きな欠点があつた.
この考案は上記に みなさたもので、以下説明するような研摩布紙ホイールを提供して従来の諸欠点、諸問題を解消するようにしたものである.
この考案の研摩布紙ホイールを図面実施例について説明すると、1は軸孔2を有する膨出部1aが中央部に形成されたホイール基盤で後記の環状研摩体3より小径となつている.また5は該ホイール基盤1の内面に適合するほぼ同形のフアイバーで、中央に上記軸孔2と適合する中心孔5aを有し、例えばガラスクロスフアイバーなどにて構成されている.そこで先ず多数の矩形状研摩布紙片4が夫々傾斜して接線方向に集束 設されて研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるように成した環状研摩体3を構成する.なお3aは該環状研摩体3の外端面、3bは同内端面、3cは同外周面、3dは同内周面である.そして該環状研摩体3の内端面3bを接着剤7によつて前記フアイバー5の内面に接着固定すると共にフアイバー5の内面中央部に中心孔5aと孔6aとを合致せしめて座板6を接着剤7によつて一体に接着固定する.しかして上記環状研摩体3及び座板6を接着固定したフアイバー5を、その中心孔5aを軸孔2と合致せしめて前記ホイール基盤1の内面に接着剤8によつて一体結合するものである.即ちこの考案は、多数の矩形状研摩布紙片4が夫々傾斜して接線方向に集束 設された環状研摩体3の外周経側を残した内端面3bに、フアイバー5を介 して軸孔2を有するホイール基盤1を接着剤によつて一体結合してなるものである.
以上のように構成されたこの考案の研摩布紙ホイールはデイスクグラインダーに着装して環状研摩体3の外端面3aまたは外周面3cを研摩面として金属表面などの研摩作業を行うものである.
この考案の研摩布紙ホイールでは、ホイール基盤1に一体結合された環状研摩体3が、多数の矩形状研摩布紙片4を夫々傾斜して接線方向に集束 設させた構成としてあるから、各研摩布紙片4か 接同士 斜状に重なり合つて相互に補強し合つて各研摩布紙片4自体の が強大となり、不均 な歪を生じたり、型崩れを生じたりしなく、かつ局部的に過度な摩耗を生じなく長期に亘つて安定使用でき寿命を著しく向上できると共に研摩の の押圧強度も均整で平滑な高精度の表面研摩が安定的に行えるなどの した効果がある.
そして特にこの考案の特徴とする所は、上記環状研摩体3を構成している多数の各研摩布紙片4が、夫々適宜角度を 斜して集束 設され研摩面の砥粒が金属加工面に対して鋭角に当たるように構成された点で、このために研摩時に、傾斜状基材布紙に結合保持されている砥粒に作用する力は、そのべクトルが該砥粒を基材布紙に押え付ける きをし、砥粒を保持している結合剤の力を助 増大せしめ、鋭い刃先の自生を促し、 に安定した れた研摩、研 能力並びに研摩精度を発揮できると共に耐用寿命が著しく増大できるなどの甚大な効果がある.
またこの考案では、研摩面で砥粒が加工面に対して鋭角に当たるため、研摩作業開始後、直ちに各研摩布紙4ごとに砥粒が脱落した帯 がそれぞれ研摩面砥粒部に接して形成され、この砥粒脱落の布紙帯 が、砥粒と結合剤との にある切り の げ となる規模の大きい一種の気孔の役目を果たして切り を内外方に円滑に排出せしめるもので、従来の 石や研摩デイスクのように切り の目づまり現象が生じなく、加工物に をもたせないし、さらに加うるに環状研摩体3も、個別の各研摩布紙片4が、集束されてなるため、熱伝導による熱の伝わりが小さく放熱効果がよいもので、加工物ともども熱をもたないため、加工物の表面に研削焼けや研削割れなど目つぶれを生ぜしめないなどの優れた効果がある.
それにホイール基盤1は、環状研摩体3の外周 側を残した内端面3bに、フアイバー5を介在して接着固定されており、デイスクグラインダーに着装して研摩作業を行う 、上記環状研摩体3の回転により、その外周 側における各研摩布紙片4の各 接空 部を夫々通過する旋回空気流が誘起され、該空気流が被研摩金属表面を冷却して摩擦加熱を防止する著大な効果がある.
また環状研摩体3は上記のように が強く研摩有効厚みが大であるから、その厚みがごく薄くなるまで長期に亘つて安定使用できるという優れた効果がある.さらにまた環状研摩体3は、フアイバー5を介在して接著剤によつてホイール基盤1に結合固定されているから、結合固定がきわめて安定強固でであると共にフアイバー5が 機能をもち、常に安定した均一な研摩を行わしめることができるなどの効果がある.
図面の簡単な説明
図面はこの考案研摩布ホイールの実施例を示すもので、第1図は縦断面図、第2図は平面図、第3図は斜視図である.
1……ホイール基盤、1a…… 出部、2……軸孔、3……環状研摩体、3a……外端面、3b……内端面、3c……外周面、3d……内周面、4……研摩布紙片、5……フアイバー、5a……中心孔、6……座板、6a……孔、7、8……接着剤.
第1図
〈省略〉
第2図
〈省略〉
第3図
〈省略〉
意匠公報
〈省略〉
実用新案公報
〈省略〉
〈省略〉